【ソロモン王のウィズダム】タルムード 「懸命で賢明な行き方」(ウィズダム)こそお金を引き寄せる

ソロモン王が世紀の賢人であると聞きつけて、田舎から三人兄弟がソロモン王に弟子入りしたいと申し込みに来た。

 

三人兄弟―「私たちにぜひウィズダムを授けてください」

 

ソロモン王―「お前たちにいつウィズダムを与えられるかわからない。私に仕えてみる覚悟はあるのか」

 

三人兄弟―「はい。ウィズダムを授けていただけるまで何年でも傍にいる覚悟です」

 

こうして弟子として仕えることになったのだが、一年経っても二年経っても、ソロモン王は三人兄弟にウィズダムを授ける気配すら見せなかった。

三年を経過したころ、三人は忍耐の限度に来た。

 

三人兄弟―「三年お待ちしましたが、ウィズダムを授けていただけませんでしたので、もうお暇を頂戴し、国に帰りたいと思います」

 

ソロモン王―「それは長い間ご苦労であった。三年仕えてもらったお礼に、金貨を百枚、一人ずつに渡そう。それをウィズダムの代わりだと思ってほしい。 もっとも、どうしてもウィズダムが欲しいと言うのであれば金貨百枚は渡せないが」

 

これを聞いた三人は、金貨百枚の値打ちに目がくらみ、「いえいえ、もうウィズダムは結構です。金貨をいただいて国に帰ります」と言って、金貨をもらって帰国の途に着いた。

 

しかし、途中で一番下の弟だけが考え直した。

「私は三年も待ったので、やはり金貨百枚を返してウィズダムを聞いてきます」

 

引き返してきた弟が金貨百枚を返すと、ソロモン王は頷いて話し始めた。

「わかった。それではお前に次の三つのウィズダムを授けよう。 一つ、旅は陽が昇ってから宿を発ち陽が落ちるまでには次の宿に入ること。 二つ、川の水が増水しているときは、水が引くのを待ってから渡ること。 三つ、家に戻ったら妻には起こったことを正直に話すこと」

 

兄二人は、金貨百枚を早く持って帰ろうと帰国を急いだ。

陽が沈んでも山道を急ぎ登り続けたが、頂上に差し掛かるころ、天候が急変し、冷たい雨が降り出してきた。

風も強く、濡れねずみになった二人は、暗闇で道に迷ったために凍死してしまった。

 

一方、早めに宿に入っていた弟は無事であった。

陽が昇って兄たちと同じ道を歩き出した弟は二人の死体を発見した。

 

弟は悲しみ、兄たちを手厚く葬った。

そして、合計二百枚の金貨を持って帰ることにした。

 

途中で川に差し掛かったが、前日の雨で増水していたので、ソロモン王のウィズダムに従い、水が引くまで渡らないことにした。

ロバに荷物を積んだ何人もの商人が、無理矢理川を渡ろうとして水に流された。

 

三日間水が引くのを待って川を渡った弟は、向こうの川岸にロバの死体が流れ着いていて、その背に大量の金貨が入った袋がくくりつけられているのを発見し、それを持って帰ることにした。

 

大量の金貨を持って家にたどり着いた弟は、妻にありのままの出来事を話した。

妻はすべてを信用した。

 

しかし、兄嫁たちは弟の話を全く信用せず、弟が二人の兄を殺して金貨を自分のものにしたと疑った。

兄嫁二人は、弟を罪人としてソロモン王に告発したが、ソロモン王は兄嫁たちに、「私が授けたウィズダムに従った弟の話に嘘はない」と言い放し、無罪を言い渡した。

 

 

「懸命で賢明な行き方」(ウィズダム)こそお金を引き寄せる

二人の兄は、金貨百枚に魅了され、賢明さを選ばなかった。

しかし、いったんは手にした大金も「懸命な判断」ができなかった故にすべて失い、命まで落とす羽目になった。

金貨を返し戻った弟は、まさに「賢明」だった。

ソロモン王の与えてくれたウィズダムが、結局はお金を引き寄せることになったのである。

「賢明な生き方は金貨に優る」のである。

ウィズダムがある人はお金で苦労しないと思われている。 しかし、逆は成立しない。 お金のある人にウィズダムが宿るとは限らないのだ。