【手と足と目と口】タルムード プレゼン力を磨け。

ある国の王様が、不治の病に侵された。

どんな医者も治すことができず、王様はどんどん衰弱していった。

 

そんななか、ある祈祷師が通りかかって、病気の診断をした。

「この病気を治すには、世界で最も手に入りにくいと言われている、母ライオンのお乳を飲ませるしかありません」

そこで、「母ライオンのお乳を持ってきた者にはどんな褒美でも取らせる」とお触れが出された。

 

とはいえ、母ライオンは、子供を守ろうとして、近づくものは皆咬み殺してしまう。

褒美は魅力的だったが、国中の人々は怖がって、ライオンのミルクなどとても取りには行けなかった。

 

しかし一人の若者がこれに挑んだ。

彼の目と耳が相談し母ライオンを見つけた。

色々考えた末に、母ライオンに羊の肉を与えて一歩近づき、また次の日も肉を与えて一歩近き…と、これを何日も繰り返して近づく方法を思いついた。

若者はこの方法を勇気をふるって実行に移した。

そして何日も繰り返して、両手、両足、両目は母ライオンの乳房のところにまで近づいた。

若者はついに母ライオンの警戒心を解き、母ライオンの新鮮なミルクを取ることに成功した。

 

ところが、いざ王様のところにミルクを持っていこうとしたとき両手、両足、両目が喧嘩を始めた。

両目「このおれが母ライオンまでの距離を正確に目測し、一歩一歩近づくことができたんだ。だからおれが一番多く褒美をもらうべきだ」

 

両足「何を言う。このおれがいたからこそ、もしライオンが襲ってきても逃げることができた。一番大切な役割だ。もちろん一歩一歩近づいたのも俺だ。だからおれが一番多く褒美をもらうべきだ」

 

両手「何を言う。母ライオンの乳をしぼったのは俺だ。それこそ一番大事な役割じゃないか」

 

三人の論争を聞いていて、今まで何もしなかった「口」が初めて口を開いた。

「両手、両足、両目も言っていることは全然なっていない。この俺こそが一番褒美をもらうべきだ。」

これには両手、両足、両目も大反論する。

「何を言っているんだ。おまえは何もしていないじゃないか。したがって、おまえの褒美は何もないぞ」

 

ところがミルクを王様に届けたときに口が勝手に叫びだした。

「王様、ここに犬のミルクを持ってまいりました。これで王様の病気は直ちに全快するはずです」

この言葉に王様は大激怒。 「母ライオンのミルクを持ってこいと言ったはずだ。なのに犬のミルクを持ってくるとは何事だ!ふざけた野郎だ、即刻処刑せよ!」

両手、両足、両目は王様の剣幕に震え上がり「おい、頼むからホントのことを言ってくれ」と口にお願いした。

 

「それみろ、口こそが一番重要なのだ。褒美は全部おれがもらうぞ、いいのか?」

両手、両足、両目はしぶしぶ頷くしかなかった。

 

口こそ最大の武器である。プレゼン力を磨け。